歩行障害とは
歩行に必要な体の各部位が、先天性または後天性による何らかの障害の影響を受ける事で、歩行困難もしくは全く歩けない状態のことをいいます。令和3年度末の歩行困難者数について、要介護認定及び障害認定をもとに推計を行ったところ、歩行困難者の推計値は34,249人で、総人口に占める割合は6.0%でした。歩行困難が即生死に直結するわけではありませんが、歩行困難の要因となる骨折、転倒、整形外科疾患、加齢、脳卒中を合わせると、寝たきりの原因として5割を超えています。
歩行障害の主な原因
1.骨折
2.転倒
3.痛み
4.加齢
5.脳卒中
自宅でできる簡単ストレッチ
1.舌押しストレッチ
2.ラジオ体操
3.足首ぐるぐるストレッチ
歩行障害を未然に防ぐ方法
1.座る時間を1日4時間未満にする
2.家事をたくさんする
3.睡眠時間を6時間以上確保する
4.加糖飲料やアルコール、お菓子などを控える
5.野菜や果物をたくさん食べる
歩行障害の意外な原因
歩くときには足を持ち上げる筋肉である大腿直筋や腸腰筋が注目されます。よって、足を大きく持ち上げる練習を一生懸命やりがちです。しかし、重要なことは大腿直筋や腸腰筋がしっかりと伸びた後に元に戻ろうとする反動で足が上がるということはあまり知られていません。歩くことに関しては、あまり筋力が必要ではないので、大腿直筋や腸腰筋をしっかりと伸ばしていきたいですね。
パーキンソン病の内服薬を過剰に摂取することで、足がすくんでしまうという報告もあります。私が尊敬する医師の先生は「パーキンソン病の薬の調整は1m離れたところから糸を投げて、針の穴を通すぐらい難しい」と表現されますので、薬の量は毎月の診察で必ず相談してもらった方がいいと思います。
症例紹介
80代男性のIさん。両足全体の痺れと痛みによって年々歩きにくくなっているということで訪問のご依頼がありました。近隣の総合病院では腰の手術も行っており、腰の影響は考えにくいということで積極的に歩く練習をしなさいと言われたそうです。ただ、両足の痺れと痛みによって、自宅内のベッドとトイレを行き来するのがやっとの状態でした。一方、Iさんは汁物や飲み物で咽ることが多くみられるようになってきているようでした。喉の機能向上とのどの筋肉と繋がりが深い足の筋肉の活性化という2つの目的を掛け合わせ、口腔機能の向上と肺の機能が向上する「あいうべ体操」を実施してもらいました。2回目に伺った時には足の振り出しがかなり良くなっており、入浴目的の通所サービスも開始されたので、月に1回の経過観察を継続する程度にサービスはとどめました。